61.美由美とのデート?

 私が美由美の家にお邪魔して、少し時間が経ったある日の午前。 あの日のことを思い出しながら、私は大通りで美由美のことを待っていた。  ……あの日、私が「どこかに出かけないか?」なんてことを言ったら。 『はい。その時にはよろしくおねがいします』  美由美はそう言いながら、こっちを見て頷いてくれた。あまりにもすんなり答えて...

島もの(独自世界観もの)

 世界は、空に縦並ぶ、幾千の「島」で出来ている――  ここは、果てしなく「深い」空に、さまざまな島が「縦」に浮かんでいる世界。  その世界の果て、「いちばん高いところ」を知っている人は誰もいない。  だって、ここはその数多い島の中でも、いちばん「低い」ところだから。  まるで何かの塔のような、島たちで出来上がっている不...

60.美由美の素顔?

 そうして、次の休日。 「ほ、本当にいいんでしょうか」 「ああ。俺もいつか、美由美の家に行ってみたかったからな」  私は美由美といっしょに、はじめて「美由美の家」に訪れようとしていた。今はちょうど、そこに向かっているところである。  ……美由美の家に訪れるの、はじめてだな。  実は昔からずっと、美由美の家は気になってい...

59.美由美との出会い

 振り返ってみると、美由美と知り合って、もうずいぶん長い時間が経っていた。  ほぼ雫と似た時期に知り合ったんだから、少なくとも3~4年はいっしょに過ごしていたってことになる。  ……もうそんな時間か。  雫との出会いもそうだったが、美由美との出会いも、なかなか強烈なものだった。  美由美がこの「組織」と関係を持つことに...

58.7月もだいぶ過ぎてきた

 私と秀樹が恋人同士になってから、早くも一ヶ月。  もう周りは、すっかり真夏になっていた。 「もう7月も半ば、か……」  久しぶりに廊下の自販機で冷たいサイダーをがぶ飲みしながら、私はそんなことをつぶやく。  もうこんなに時間が過ぎていたんだ。ちょっと信じられない。  まあ、秀樹に「別の姿」がバレて、付き合うことになっ...

Ex01.ひと息の時間

 それはいろんなことが落ちついた7月の終わり頃。 私は久しぶりに、事務室で秀樹と時間を過ごしていた。「平和だねぇ~」 秀樹はいつものように、自分の指定席で羽根を伸ばしている。 私と久しぶりに出会えて、かなりご機嫌のようだ。 「でもな、不思議だよね」「何がだ」「柾木んちの『組織』は『反軍』と戦うって聞いたのに、最近全然そ...

そうして少女たちは永遠なる眠りにつく

 ――最初に、一つがあった。  その一つが男か女かはわからない。ただ最初の存在が、何も持たず、空から地上へと降りてきた。  ある人はそれを見て男だといい、またある人はそれを見て女という。  それがどういう存在だったのかはわからない。男だったかもしれないし、女だったかもしれない。あるいは、男と女、そのどちらでもあったかも...

57.私たちのこれから

 雫と過ごしたあの最後の夜から、いくつか時が過ぎた。 暑さはだんだん強くなってきて、もう夏も真ん中だということを思い知らせる。  あの日からしばらく経ってから、私はお父さんと廊下で出くわした。 「……」 「……」  しばらく、私とお父さんは何も話さない。  もちろん、お父さんもこの時点では、私と雫のことをすでに知ってい...

56.でも、今だけはいつものように

「えへへ、これが最後、なんだね」  名残惜しい顔で、雫がそんなことを言ってくる。 「なんか寂しいな。柾木とこんなことやってたのも、ずいぶん長かったのに」 「まあ、はっきりいってやりすぎだったとは思うが」 「それはね~わたしたち、まだ若いから~」 「いや、若いのもほどがあるんだろ」  いつものような、会話。  そして、二...

55.さよなら、わたしの初恋

「戻って、来たね」「ああ」  どれくらい時間が経ったんだろう。 もう周りも暗くなり始めた頃、私と雫は、自分の執務室に戻っていた。 雨はすっかり止んでいて、周りはとても静かである。 まあ、この執務室って、防音がしっかりしてあるから当たり前だけど。 「暖かったよね、シャワー」「雫も俺も、ずっと雨に打たれていたからな。服が乾...