マチロジ・夏休みその二

 もう夏も絶好調である昼の午後。
 この夏に取り壊される予定である古井高校の旧校舎の屋上で、ヒマリは思いっきりくだびれていた。

「もうやだ、こんな夏……」
 澄み切った青空の下で、ヒマリはそんなことを屍(ゾンビ)のように呟く。
「どこかの真夏さんのおかげで、力なんてとっくに抜けてるし……」
 そのぼやける声を、乾いた夏の風が遮った。
「なんかやりたくてウズウズしてるのに、何も思いつかない……」
 視線の向こうにある木々の青さすら、まるで色褪せたように思えるほど、今日はいつにも増して暑い。
「人生という暇を潰すためだけの暇つぶし…」
 そう項垂れるヒマリの横顔を、真夏の眩しい日差しが鈍く照らす。
 夏は、すでに頂点に達していた。

「はぁ……」
 そんな感じで不満をだらだら述べていたヒマリは、自分のお腹から出てくる立派な音に気づき、眉を潜めた。
「ひつまぶし……」
 やっぱり、お腹が空いてるとロクなことがない。