64.あなたの、いちばんの友だちになりたいけれど
「ところで柾木、高梨さんとのデートは上手く行った?」「あ?」 美智琉とカフェで話してから、次の日。 私はなぜか、久しぶりにこの「組織」までやってきた秀樹にそんなことを聞かれていた。 「何言ってるんだ、まったく」 「え~? 以前のあれって、誰からどう見てもデートでしょ?」 「だ、だから、そんなものじゃなくて……」 ...
「ところで柾木、高梨さんとのデートは上手く行った?」「あ?」 美智琉とカフェで話してから、次の日。 私はなぜか、久しぶりにこの「組織」までやってきた秀樹にそんなことを聞かれていた。 「何言ってるんだ、まったく」 「え~? 以前のあれって、誰からどう見てもデートでしょ?」 「だ、だから、そんなものじゃなくて……」 ...
「そ、それにしても、さっきはびっくりしました」 しばらく時間が経ってから、とあるオシャレなカフェの中で。 アイスチョコレートドリンクを口にした美由美が、そんなことを話してきた。 「あ、ひ……橘たちのことだな」 「呼び方は別に今までで大丈夫です。橘さんと柾木くん、付き合ってるのは周りから聞きました」 「そ、そ、そうか...
私が美由美の家にお邪魔して、少し時間が経ったある日の午前。 あの日のことを思い出しながら、私は大通りで美由美のことを待っていた。 ……あの日、私が「どこかに出かけないか?」なんてことを言ったら。 『はい。その時にはよろしくおねがいします』 美由美はそう言いながら、こっちを見て頷いてくれた。あまりにもすんなり答えて...
そうして、次の休日。 「ほ、本当にいいんでしょうか」 「ああ。俺もいつか、美由美の家に行ってみたかったからな」 私は美由美といっしょに、はじめて「美由美の家」に訪れようとしていた。今はちょうど、そこに向かっているところである。 ……美由美の家に訪れるの、はじめてだな。 実は昔からずっと、美由美の家は気になってい...
振り返ってみると、美由美と知り合って、もうずいぶん長い時間が経っていた。 ほぼ雫と似た時期に知り合ったんだから、少なくとも3~4年はいっしょに過ごしていたってことになる。 ……もうそんな時間か。 雫との出会いもそうだったが、美由美との出会いも、なかなか強烈なものだった。 美由美がこの「組織」と関係を持つことに...
私と秀樹が恋人同士になってから、早くも一ヶ月。 もう周りは、すっかり真夏になっていた。 「もう7月も半ば、か……」 久しぶりに廊下の自販機で冷たいサイダーをがぶ飲みしながら、私はそんなことをつぶやく。 もうこんなに時間が過ぎていたんだ。ちょっと信じられない。 まあ、秀樹に「別の姿」がバレて、付き合うことになっ...
それはいろんなことが落ちついた7月の終わり頃。 私は久しぶりに、事務室で秀樹と時間を過ごしていた。「平和だねぇ~」 秀樹はいつものように、自分の指定席で羽根を伸ばしている。 私と久しぶりに出会えて、かなりご機嫌のようだ。 「でもな、不思議だよね」「何がだ」「柾木んちの『組織』は『反軍』と戦うって聞いたのに、最近全然そ...
雫と過ごしたあの最後の夜から、いくつか時が過ぎた。 暑さはだんだん強くなってきて、もう夏も真ん中だということを思い知らせる。 あの日からしばらく経ってから、私はお父さんと廊下で出くわした。 「……」 「……」 しばらく、私とお父さんは何も話さない。 もちろん、お父さんもこの時点では、私と雫のことをすでに知ってい...
「えへへ、これが最後、なんだね」 名残惜しい顔で、雫がそんなことを言ってくる。 「なんか寂しいな。柾木とこんなことやってたのも、ずいぶん長かったのに」 「まあ、はっきりいってやりすぎだったとは思うが」 「それはね~わたしたち、まだ若いから~」 「いや、若いのもほどがあるんだろ」 いつものような、会話。 そして、二...