87.ありがと、みんな

 いろいろあったけれど、ようやくやってきた休日の午後。「お、おう、来てくれたんだな、柾木」 私は珍しくも慎治に呼ばれて、ここ、いつもの公園までやってきていた。 ……こいつ、以前には「話すだけなのに、わざわざ公園まで呼び出して」なんか言ってきたくせに、今度はどういう風の吹き回しなんだろうか。 正直、かなりわかりかねる。 ...

86.姉妹の思い

「あの、高坂さん」 「……どうした?」  次の日。私は休憩がてら外に出かけて、いきなり美智琉と出くわした。  ぶっちゃけ、こんな場面で美智琉の顔を見るとは考えもしてなかったため、私は少し戸惑う。別に美智琉と会いたくなかったとか、そういうわけではない。ただし、私は未だに一人で悩んでばかりだったから、美智琉と顔を合わせるの...

85.こんな、私が

 それから何日が過ぎて、私の周りにもいつもの日常が戻ってきたように思えた。  ……つまり、一応はいつものような日々が続いているけれど、私にはどうも、それが実感できない。  ぼんやりしているっていうか、どうすればいいのかわからない。なんとかやるべきことはこなしているものの、どうしてもいつものように、シャキッとした態度にな...

84.大好きだから、話せない

 ……昨夜はどうやって眠りについたんだろう。  次の日の朝、なんとか目が覚めたものの、私は未だにそれがわからなかった。  相変わらず頭が重くて、何も考えられない。だけど、私は社会人なんだから、そろそろしっかりしなくてはいけないんだ。  わかっている。わかっているつもりだけど――  今は、どうしても体に力が入らなかった。...

83.どうして、私は

「はぁ……」  思わず、ため息が口からこぼれ落ちる。  こういうのが、心も体もボロボロになった、という状態なんだろうか。何もかもが虚しくて、気力も何も湧いてこない。  こういう気持ちは、初めてだ。  今、私は完全に参っているんだ。なぜか今は、それがはっきりとわかる……というか、すんなりと納得できそうだった。  そんな虚...

82.会議のこと

「報告は以上になります」  そう口にして、私は椅子に腰を下ろした。いつもながら、「組織」の幹部たちが一斉に集まった会議の時には緊張してしまう。  飯塚との話し合いの後、私が「組織」へ戻ると、すぐ緊急会議が始まった。どうやら、私が「組織」に戻ってくるタイミングを計っていたらしい。  ともかく、私はその場で、さっきの飯塚と...

81.向き合った現実

 そして、あっという間に時間は過ぎ。 「そろそろか……」  私はあの日「反軍」の方から指定された、近くの喫茶店に向かっていた。  おかしいほど晴れ晴れな天気が、今の私の心とは見事に異なっていて、どこかいらいらする。  もちろん、この件についてはすでに上層部に報告を済ませている。「あいつら、いったいどういうつもりなんだ」...

80.「反軍」の目的

「反軍」が攻めてきた日、「組織」はいつもより何倍も忙しくなる。 基本的に、「反軍」は世界の「組織」とされる様々な施設を一斉に攻撃する。たぶんそのやり方が、いちばん「組織」の盲点をつけられると思っているのだろう。従って、「反軍」に責められると、全世界の「組織」に賛同するところ、つまり日本としてはここが一番騒がしくなってし...

79.気づかないふりをしてたもの

「ふいー最近はだんだん日差しが強くなってるなぁ」  明後日の昼頃、「組織」の廊下で出会った慎治は、すごく疲れた顔をしていた。  もう8月も本番だ。今頃、外に出かければひどいくらい汗が出てくる。さっきまで外で遊んでばかりいた慎治が暑がるのも当たり前だろう。 「こういう日に、外を一周走ってこい! とか言われたらマジで死ぬわ...

77.人生最大の恥

「あ~やっぱりここはちょー落ちつく」  私の部屋に戻ってくると、秀樹は見事にダメ人間になってしまった。だらけすぎて、クラスのみんな……特に女の子が見たら卒倒するに違いない。  でも、秀樹のこういう顔を見られる人は、きっとこの世の中で、私一人だけなんだろうな。  そう思うと、たしかにだらけない姿ではあるものの、少し嬉しく...