55.さよなら、わたしの初恋
「戻って、来たね」「ああ」 どれくらい時間が経ったんだろう。 もう周りも暗くなり始めた頃、私と雫は、自分の執務室に戻っていた。 雨はすっかり止んでいて、周りはとても静かである。 まあ、この執務室って、防音がしっかりしてあるから当たり前だけど。 「暖かったよね、シャワー」「雫も俺も、ずっと雨に打たれていたからな。服が乾...
「戻って、来たね」「ああ」 どれくらい時間が経ったんだろう。 もう周りも暗くなり始めた頃、私と雫は、自分の執務室に戻っていた。 雨はすっかり止んでいて、周りはとても静かである。 まあ、この執務室って、防音がしっかりしてあるから当たり前だけど。 「暖かったよね、シャワー」「雫も俺も、ずっと雨に打たれていたからな。服が乾...
次の日、雫は私のところにやってこなかった。 いつもならかけてくるはずの連絡も、まったくなかった。 当たり前だった。 昨日の私は、雫に「ひどいこと」をしたんだから。 ――あのね、柾木。 そんなことを思いながらも、どうにかお仕事に集中していたら、真夜中、雫に「端末」でメッセージが送られてきた。 ――ごめんね。...
「死〜ねばいいのに〜」 雫は私と二人きりだと、よくそんな歌を口ずさむ。「み〜んな死ねばいいのに〜」 学園ではいつも明るく振る舞う雫が、こんな歌を口ずさんでいることを知ったら、雫のクラスメイトはどんな顔をするんだろう。 あの時、じっと後ろを歩いていた私は、惨めな気持ちでそんなことを考えた。 雫にとって、自分はきっと特別...
「ああ~~今日はホントに大変だった~~」 明後日の午後。 雫はものすごくだらけた態度で、そんなことを言いながら私の執務室で少女マンガを読んでいた。いつものふかふかな来客用の椅子は、もはや雫の指定席と化している。 「今日はどうした。そこまで情けない声を出しまくって」 「情けないとか言わないでよ~。かわいい彼女の声でし...