76.私たちの「関係」は
「おっ、今日も柾木が案内してくれるのか」 次の日。 珍しくも私は、「元の姿」で「組織」にやってきた秀樹と出会う。 いや、「別の姿」になるためここにやってきたこともあるわけだから、この姿で「組織」にやってきたのは今日が初めてじゃないけど……。あえていうと、「男同士」な形で「組織」で出会うことになったのが初めて、だと...
「おっ、今日も柾木が案内してくれるのか」 次の日。 珍しくも私は、「元の姿」で「組織」にやってきた秀樹と出会う。 いや、「別の姿」になるためここにやってきたこともあるわけだから、この姿で「組織」にやってきたのは今日が初めてじゃないけど……。あえていうと、「男同士」な形で「組織」で出会うことになったのが初めて、だと...
次の日、つまり土曜日の朝。 私は珍しくも「元の姿」で、いつもの大きな公園の前で秀樹のことを待っていた。まあ、昨日慎治たちにも話したように、「デート」のためである。 ……今度が初めてのデートでもないというのに、なんでここまで心がドキドキするんだろう。 自分のことだというのに、こういうところはよくわからない。 まあ...
「んで、昨日の夜は恋人同士でいちゃいちゃしてたって話か?」 私がようやく「組織」に戻ってきて、お仕事ばかりしてから廊下へ出てくると、まるで待っていたように、慎治が「端末」でゲームを楽しんでいた。 まあ、つまりいつものような風景である。 こいつ、まともに訓練はやってるんだろうか。いつもながら気になるな……。 「おい...
「おお、柾木んちに来るの、久々!」 「……そこまで嬉しいのか、まったく」 ようやく心身とも余裕ができて、私は久しぶりに、秀樹を連れて家に戻ってきた。 やはり家の中は落ちつくな。当たり前だけど。 最近はずっと会社……「組織」にいてばかりだったから、久々に味わう家の空気がなぜか愛しく思える。 「でも、ここに来ると柾木...
みんなには普通に、いいヤツのように振る舞っている。 だが、心の中では寂しかったり、苦しかったり、そういう暗い感情も渦巻いていた。 誰にもこんな心の中なんか、バレたくない。きっとみんな遠ざかってしまうから。 ずっと、そんなふうに思っていた。以前彼女ができた時だって、それは変わらなかった。 だから、これからもずっと、自分...
美智琉と再び出会ったのは、それから少し日が経った時だった。 ――今度こそ美由美の兄弟たちにお菓子をちゃんと渡そう。 そんなことを思いながら大通りを歩いていると、ふと、図ったように美智琉と出くわすことになったんだ。 「ところで、それからそっちは大丈夫だったか?」 すべてを語った私がそう聞くと、美智琉は複雑そうな顔をし...
次の日の昼。「組織」の近くにあるいつもの公園。 すっかり常連になってしまったな、としみじみ思いつつ、私は美由美とまたここにやってきた。 別に大した理由があったわけではない。 ただ、なんとなくここでいっしょに時間を過ごそう、という空気になった。 「あの、柾木くん。さっきからずっとそわそわしてますけど……」 私の...
「な、なんですか。いきなり呼び出して」 美由美と出かけてから少し時間がたったある日。 私は珍しく、以前の番号を利用して美智琉をあの喫茶店まで呼び出していた。 もちろん、理由もなく呼び出したわけじゃない。こっちはちゃんと、美智琉に用件があったんだ。 「さあ、受け取ってくれ」 「な、なんです?!」 私が懐の中で「そ...