ちょっと変わった学園であることは確かだが、施設などは割と普通の学園と似たようなものであり――
生徒自治とか、そういう非現実なところもあまりない、かなり普通の学園であった。
だが、今年はちょっとだけ違う。
何せ、今年の生徒会は歴代最高の知名度、そしてそれこそアイドルじみた人気を持つ、桁外れの支持で出来上がっているからだ。
美人で優秀な生徒会長と、それを支える有能な副会長――昨年のある「行事」をパーフェクトに勝ち上がった、学園でも文句なしの名コンビ。
この学園では、ある「行事」で勝ち上がると生徒会長を再任できる。
ということで、今年も順調に行けば今の生徒会長が再選するんだろう、とほとんどの学園生は思っていた。
そう、「あの事件」が起こる前までは。
あの「行事」まで間もない頃。
副会長は「思想の不一致」を理由に、今年は生徒会長ではなく、他の女子生徒と共に「」に出る、と宣言する。
それは即ち、今の生徒会長を裏切るといういこと。
ある意味、ドラマチックすぎる下剋上。
それ以来、あそこまでカリスマに溢れていた生徒会は分裂。
現生徒会長は生徒会書紀と組んで「行事」に挑むと宣言し、会計は静観を理由に足を洗う。
誰も想像なんてしていなかった事態が、「行事」の直前に起きてしまった。
――副会長が生徒会長を裏切ったという、なんともセンセーショナルな事実はすぐ学園中に広がり。
当たり前ではあるが、その事実で学園は持ちきりになったわけである。
そんな空気の中、今年も事実上会長選挙で当てはまる学園の名行事、「」の時期が近づいてきた。
いつもに増して盛り上がりを見せている中、
「こ、これからは静かに暮らしてぇ……」
そうつぶやくのは、学園の二年生であり、ちょっとした事件で(ありがたくない)有名人になっていた主人公・周防雪兎(すおう・ゆきと)。
別の名を、「狂気の雪兎」。
あのクソッタレな事件のせいでついてしまった、まったくありがたくないあだ名。
男としては背も小さく、成績も普通(ただし物理は破滅的)であり、普通ならあまり興味を持たれることはなかったはずだが――
半年前の冬、名づけて「狂気の雪兎事件」のせいで、ごくごく一部では有名人になってしまった、可愛そうな学園生の一人。
なのに、ある日の朝、いきなり雪兎に声をかけてきた女の子は――
「周防君、わたしと一緒にこの世界を変えてみない?」
「……学園行事くらいで世界が変わってたまるかっ!」
ある意味才色兼備の、ついでにスタイル(背も)抜群の、学園内の有名人の一人だった。
そうして、迷惑極まりないことに。
雪兎はあの子とパートナーを組んで、イベントに挑むことになるのだった。
・ヒロイン4
学園二年生。ショートカット(に近いがちょっと長い)。
副会長の妹……ではあるが、お互い、公的な場ではまったくその素振りを見せない。それところが、赤の他人より冷たい態度を取る。
この行事「」についてあまりよく思っておらず、騒がしくて迷惑という態度を取っている。教室で一人で本を読むことが多い。