サイクリング物

おとなしい系の優等生な黒髪ロングのヒロインが、初めて女子高校に入学して、偶然見かけた長髪の美人の真剣にサイクリングをしている姿に惚れて、自分には一生縁がないと思っていた、体育系の「サイクリング部」に入る作品。
でも、その「美人の先輩」には信じがたいある秘密がー。
そんな二人と、サイクリング部の先輩である、「仲が良すぎる」二人と、そんなヒロインを心配するクラスメイトの友達が繰り広げる、熱くて優しい、ホロリと来る自転車レース部活の話。


先輩01:おっとりした印象の持ち主。サイクリング部の料理係。色んな意味で先輩02と仲がいい。見た目とは違って、肉を好む。

先輩02:サイクリング部の部長。リーダーシップのあるカリスマ的性格。先輩01を心から愛している。

美人:過去、プロのサイクリング選手だったが、「ある事情」によって姿が変わり、主人公の高校に編入した。自分にも他人にも厳しい性格。姿が変わったという非現実的な事件があったのにもかかわらず、未だに「最速」を目指している。

ヒロインの友達:高校に入ってからできた、主人公の友達。あまり目立たがらない性格。自分の見えないところで部活をやったり美人と触れ合っている主人公のことを心配している。


ふと、心臓が止まるような気がした。

艶のある長い黒髪が、わたしの肩にそっと落ちてくる。それと同時に、少しだけ重たいのが、わたしの肩に置かれた。

くすぐったい。

その重たさの正体は、もちろんよくわかっている。そんなこと、確認するまでもない。この静かな呼吸も、髪の毛の感触も、わたしはよくわかっている。

だから、今のわたしは、異常なくらい顔を赤くしているのだろうか。どれだけ見えなくても、それだけははっきりわかる。となりの遼一さんが眠りについていて、こちらに気づいていないのが救いだった。心臓の音でバレてしまったらどうしよう。想像するだけで顔がもっと赤くなりそうだ。

この人は、ほんとうに「サイクリングしか知らない」バカだ。こんなとき、わたしがどんな気持ちなのかは、これっぽっちも考えていないだろう。

だからこんなに、無防備で眠りについてしまったのだ。

わたしが、ここにいるというのに。

この人にわたしといった存在は、いったいどう思われているのだろうか。

ーひとは、なぜひとのことを好きになるのだろう。

わたしは、やっぱり、この人のことが、「好き」なんだろうか。