無能愚者のプロデューサー/わけありアイドル

とあるところで、高山稔というプロデューサーがいた。彼はでかい夢を持っていて、「いつか、世界をあっと驚かせるアイドルの卵を見つけてやる」と強く思っていた。つまり、輝く女の子は必ず皆に魅力を伝える義務がある、と思っている男だった。その魅力、つまり「惹かれる」ところを見るたびに、彼は「このままじゃ、その魅力が惜しい」といつも思っているのだ。
だが、どちらかと言うと彼は笑われ、低く見られ、無視される方だった。それは彼の短気な性格や「ひたすらすぎる」一途な思いにもあったが、彼が持つどうしようもない運命(さだめ)の方が一番の理由だった。
遠くから見るとあまりにもおかしい、いっそ嘲笑いたくなる彼の姿。大学に入ってから自分の意思と関係なく「別の姿」になってしまい、仲間たちには笑われ、彼女とも喧嘩別れ、自分を「そのまま」で見てくれる人は本当にいない。
それでも「まだ見ぬアイドルの原石」を探し続けた稔は、やがて一人の少女と出会う。
その女の子はアイドルともっとも離れている優等生ーそして、奇遇にも稔と似たような体質を持っていた。アイドルなんかはよくわからなくて、「自分はアイドルに向かない」と思っている、真面目で現実的な、「自分のことをよくわかっっている」女の子だった。
だが、稔はこの時、確信する。
この子は、絶対に素晴らしいアイドルになるのだろう、って。

それから稔と少女である亜梨香の、新しい話が始まる。
目指すのは「輝くアイドル」、現実は「どこか胡散臭いプロデューサー&訳ありひよっこアイドル」。
だが真剣、けれど笑い事。
これはそういう人々を描く、「ぜんぜんかっこよくない」アイドルへの導き。