「す、すごいです、ヒマリさん! わたし、こんなに楽しいことが世の中にあるって、今、初めて知りました!」
「はいはい、あんたはそうなんでしょうね」
「ところで、ホントにいたんですね。ガチのビデオゲームをやったことのない人って」
「まあ、生粋のお嬢さまだからね、あいつって。今はただの冴えない男だけど」
「…おかげさまで、ギャップモリモリで風邪を引きそうですけどね、こっちは」
「そこはいいんだけど、なんか、あいつに安いアイスとかゲームとか教えてると、悪の道に誘い込んでる気がするんだよね…」
「…まあ、気持ちはわからなくもないッスね」
下手くそながらも「はじめてのゲーム」に夢中になってる紗絵(の入った健太郎)をじっと見ながら、ヒマリと良平はそんなことを話していた。
今の姿が20代くらいの青年だということを疑いたくなるくらい、その顔は無垢なものである。
「す、すごいです。ヒマリさん! これが、人を殴るという感覚なんですね!!」
「…あのさ、その姿で、治安悪い話はちょっとやめてくれる?」
「あれ、『この姿』じゃ、ダメでしょうか?」
「健太郎の姿では冗談にできないって、今のセリフ…」
これだからお嬢さまは。
あまりにも無垢な顔でこっちを見る青年の顔から、ヒマリはそっと視線を逸した。