――初めて、雫を抱いた時。
当たり前だけど、私はすごく悩んだし、どうしたらいいのか、本当にわからなかった。
いや。あの時点で、すでに両親からの許可は取っていたわけだけど……。
その、いったい雫にどう接すればいいのか、まったくわからなかったんだ。
以前にも語った通り、雫はすでに私の「元の姿」の存在を知っている。
たしかに「直接」その姿を見たことは一度もないし、そもそも「元の姿」がどうなのかは知らないけれど、ともかく、存在だけは間違いなく認知していた。
つまり、もし、今の私が「元の姿」で雫と街角ですれ違ったとしても、向こうは決して気づかない、ということだけど……。
いけない。そんなことを思い浮かべていたら、かなり寂しくなってきた。
雫に「他人」と認識される時があり得る、と言うだけで、すごく切ないっていうか、やるせないっていうか……ともかく、そういう気持ちになる。
だから今の雫は、ただ「見て見ぬふり」をしているだけだ。
私が本当の男じゃないことなんて、雫はとっくに知っている。ただ、それから目をそらして、私を自分の「彼氏」、つまり「婚約者」のように扱っているわけだ。
それはまるで、両親に公認された恋人ごっこのようなもの。
どれほど雫の家族と私のお父さんから公認されてるとしても、これはあくまで、偽りの関係だ。仮の関係なのだから、これが一生続くことはない。
私たちがやってることは、ただの「ごっこ遊び」なのだから。
でも、本当の「あるべき」私と雫の関係って、いったいなんだろう。
もし、私が「元の姿」で雫と顔を合わせることになったら、私たち、もうそのまま終わってしまうのかな。
そうなった場合には、今までのように、目をそらし続けることもできないんだろうし……。
苦しい。
なぜか、私はとても泣きそうな、切ない気分になった。
いけない。今は「元の姿」じゃないと言うのに。
こんなの、他の人にバレたら気持ち悪いだけなのに――
――話はまだ、私と雫が「関係」を結ぶ直前へと戻る。
「本当にこれでいいのか、雫」
「うん。わたし、決めたの。柾木の方がいいって」
私は何度もそう意思を確かめたが、雫の気持ちは揺るがなかった。いや、むしろ、はるか昔からそうしようと決めていたような、断固たる態度だった。
「だって、わたし、柾木と迎える『初めて』に、ずっと憧れてた」
「今なら、また引き返せる。これは軽く決めていいものじゃない。自分はそう思う」
「でも、柾木がいい」
「……」
困った。
今振り返ってみても、この時くらい悩んだり、大変な目にあったりしたことは滅多になかった気がする。
私がそんなふうに悩んでいたら、雫は、想定外のことを口にした。
「でも、いいのか? 俺は純粋な男じゃ……」
「別にいいよ。わたしだって純粋じゃないし」
――今思い返すと、それがトリガーだったのかもしれない。
それを聞いた私は、気がつけば、そのまま雫をベッドに押し倒していた。
なぜだったんだろう。自分にもとっさのことだったため、上手くは言えないけれど……。
たぶん、雫の投げやりなその口調に、体が反応していた気がする。
まあ、今になっては、あまりにも昔の話になったので、確認する術もないが。
初めての行為が気持ちよかったかどうかは、もうあまり覚えてない。
あの出来事自体が衝撃的すぎて、肝心のところはほぼ薄れてしまった。
でも、満たされた、ということは未だにはっきりと覚えている。
雫も痛そうにしていたけど、やっぱり、「柾木とやれて、よかった」とずっと微笑んでいた。
痛そうだったのに、こっちを見て微笑んでいたんだ。
私のためだけじゃなくて、自分自身も癒やされたような、満面の笑みで。
その笑顔が、あまりにも眩しくて。
私はあの時、これを忘れることなんて一生できないんだろう、と悟った。
次の日。
「柾木~~こっちこっち!!」
「いや、もう道はわかっているから。なんでそこまでせがむんだ」
私は久しぶりに、雫の熱い誘いに負けてしまい、雫の家へと向かっていた。
「熱い誘い」っていうか、つまり「今度こそ行こうよ~」といういつもの強気だったわけだが、私も最近、あまり雫の部屋に行ってないし、今度はお邪魔することにしたんだ。
それに、断ると後先が怖いし。
雫って一度拗ねてしまうと、どうしても機嫌を戻すのが大変なのだから……。
そうして、やっと私たちは雫の家にたどり着く。
雫の家は、まさにお金持ち、という言葉がぴったりの豪邸。もちろん、うちだって他の人からするとずいぶん大きいとは思うが……雫の家はそもそも二階だし、真っ白だし、庭には噴水まであるくらいだし、なにもかもが高級にできている。それに、うちと違って街の中心地に位置してるんだから、維持のためのお金もだいぶかかっているはずだ。
なんていうか、昔の絵本に出てきそうな素敵な家っていうか……。とてもクラシカルな、一昔前のお金持ちの家って感じのところだった。
たしかに綾観家は大家族なんだから、そこまでヤリ過ぎなわけでもないはずだけど。それでも、初めて訪れる人ならば、誰でも開いた口が塞がらない風景だろう。さすがに、もう老舗と言ってもおかしくないくらいの、巨大IT企業の創業者の名は伊達じゃない。
ちなみに、綾観家の構成員は両親と息子3人、娘3人(もちろん、雫を含めて)で、今の時代からすると、ちょっと信じられないくらいのマンモス家族だ。一人っ子ところか子供がいない家族すらたくさんいる今の時代で、ここまで大所帯な家族も珍しい。うちだって二人姉妹なんだけど、子供の頃にはよく「大家族だねー」と言われたくらいだし。
……いや、もうひとり、私の知り合いに綾観家並みの大家族持ちがいるんだけど、それはまた後の機会で。
今は、あくまで雫との時間なのだから。
「ささ、た~くさん召し上がれ!」
「いや、その、雫が作ったわけでもないだろ、これ」
「でも、うちのお母さんがすごく頑張ったもの。あと、ちょうど家にいたお父さんとお兄さんたちも!」
まるで子供みたいに、こっちを見ながらわくわくしている雫と向かい合ったまま、私は少しだけ遅い昼食をゆっくりと取り始めた。
雫って、こんな時だけ見るとまるで犬みたい。いつもはうさぎさんのような印象なのに、変だ。
まあ、そこが秀樹と似ている、と言えば似ていると言えるけど……。
あの二人、正反対っぽく見えて、どこか似ているのが不思議だ。
私が食事をしながら、そんなことをぼんやりと思っていた時だった。
「じー」
「な、なんだ」
雫は目の前で、まるで何か言いたげな顔でこっちをじっと見ている。
な、なんだろ。何か気に食わないことでもあったのかな。
そう戸惑っていたら、今度は雫が行動を起こした。だが、その行動は、あまりにも突飛なものである。
だって、今の雫は。
いきなり椅子から起き上がって、床にしゃがみこんでから、そのまま食卓の下に入っているのだから。
「……ちょっと、雫。今何やってるんだ?」
急に食卓の下に潜り込んだ雫(がいると思われるところ)をぼうっと見ながら、私は目を丸くしながらそう言いかけた。
だ、だって、今の私、お昼ごはんの途中だし。
えっと、ま、まさか、アレだったりして……?
「柾木にいいこと、してあげようと思って」
「だから、そのいいことって、いったいなんだ」
「え~柾木って、まだ気づいてないの?」
いや、たぶん知ってる。
わかってはいるけど、今はあまりにも突然すぎて、ちょっと受け入れがたいだけだ。
「いいことだよ、いいこと。いつもやってあげてる、サービス」
そうして、雫は私のすぐ下まで近づく。
だ、大丈夫かな。今、周りに誰もいないのはわかっているつもりだけど……。
「い、今は昼食の時間だ。だからやるなら後で――」
「ダメ。わたしは今、柾木にしてあげたいの」
今日の雫は、ずいぶん手強い。このまま退いてもらう、という選択肢はなさそうだ。
で、でも、さすがに食堂でやるとか、そういうのは勘弁してほしいな。
恥ずかしいし、照れくさいし、そもそも、今の私は食事の途中だし……。
雫の気持ちはわかるけど、今はちょっと、どうかと思う。
「雫。今、俺は食事中って言ったんだろ」
「だから~。せっかくだし、こっちも召しあがればいいのでは?なんてね」
「あのさ、こっちが反応しづらいジョークはやめてくれないか」
「冗談じゃないしー」
ダメだ。これじゃ、こっちの方までダメになりそう。
「ねぇ。いいでしょ? 最近は橘さんに構ってばかりだったから、わたしのこと、恋しくなったんだよね?」
「えっと、なんだ、それは……」
「わたし、柾木の婚約者なんだから、このまま負けてばかりではいられないよ」
どうしよう。下に広がっている影の向こうで、雫の瞳が、キラッと光った気がした。
「柾木は、わたしの彼氏なんだもの」
雫は子供のように、ニヤリと笑ってみせる。
だけど、これから雫がしようと思っていることは、きっと、子供がやっていいことじゃなかった。
「と、いうことで」
私がそう構えていると、雫がこちらのズボンに手を伸ばしてくる。
こんな時の雫の顔は、あまりにも無垢で、無邪気で、それでいてひどくいたずらっぽくて……。
正直、その顔が上手く見られなかった。
雫が心を開いてくれた二年余りの間、私は何回も、そんなどうしようもない感情を抱いている。
雫が自分のことを愛してくれるのは、すごく嬉しい。誰よりも誇りに思ってるし、正直、誰にも渡したくない。
なのに、私の心は、こんなに複雑だ。
大好きな子が、気持ちいいことをしてあげようとしている寸前なのに。
そんな私の複雑な心を置いといて、雫は私の下半身の探索を続ける。
ジーンズのジッパーを下ろし、私のパンツに手をかける。そして、密かにいたずらを仕掛ける子供のような手つきで、ゆっくりと「そこ」を下ろした。
そうすると、服の中に収まっていた私の一物が、やがてその姿を現す。
……かつて、雫を除いては誰にも見せなかった、私の大切なところ。
まあ、今は「別の姿」だから、その姿は大きく変わってるけど。
「ふふっ、ようやく見つけた。柾木のおちんちん」
雫は、まるでおもちゃを見つけた子供のように、ニヤニヤと私を見上げながら笑っている。
……私はいつも、あんな顔の雫を上手く見つめられなかった。
ここまであどけない顔をしている雫だというのに、これからやるのは、まったく子供っぽくないんだ。
「ほら、怖くない怖くない。わたしが優しく撫でてあげるからね?」
その柔らかな声と指が、私の体に届くことを感じる。
あまりにもささやかで、気を抜くと失われそうな感覚。
なのに、驚くほどそれに敏感に反応した私のペニスは――バカみたいに、太くなってしまった。
きっと、食卓の下の雫はひどく喜んでいるのだろう。
自分の指で私が興奮したことを、誰よりも喜んでいる子なのだから。
「ふふっ、すぐ太くなっちゃったね。かわいい」
「……こんなところでやっちゃ、いけないって言ったろ」
もう半分諦めた口調で、私はそう抵抗してみる。
とは言え、雫がこれでやめないということは、私が誰よりもいちばんよく知っていた。
「このまま焦らしちゃ、柾木に悪いよね」
私の大きくなったペニスをそっと触りながら――雫はそう微笑む。
……ここからはハッキリと見えないけど、私にはそれがわかってしまった。
「じゃ、これからはわたしが柔らかく癒やしてあげるから」
そう口にしてから、下の方から服がめくられる音がする。
……それがどのような意味なのか、私はもう知っていた。
きっと、雫は食卓の下でブラを外しているのだろう。それが何のためなのかは、もはや確認するまでもない。
しばらくしてたら、やがて食卓の暗いところから、あまりにもいやらしい雫のおっぱいがはみ出てきた。
二年ほどずっと見てたはずなのに、どうしてこんなところで目にすると、ここまで下品に見えるのだろう。
顔がしっかり見えないというところが、ますます雫のおっぱいのエロさを引き立てているような、変な気分になってしまった。
……これから私と雫は、いけないことをする。
下手すると、綾観家の人にバレてしまうかもしれない、いけない遊びを。
「わたしのおっぱいを自由に使っていいのは、この世の中で柾木だけだよ?」
きっと、私が普通の男なら、その言葉を何よりも喜んでいたのだろう。
でも、こんな「普通じゃない」私としては。
雫の心は非常に嬉しかったが、すごく複雑な気持ちになってしまった。
「お待たせ。ここからは嬉しいご奉仕の時間だよ」
すぐやってくる快感に、私は思わず腰をビクッと動かした。
自分の股間――ペニスが、雫の大きなおっぱいに包まれていることをはっきりと感じる。
それと同時に、雫がこっちに向けてちょこんと頭を出してきた。
……やはり、あんな狭いところで私のことを「喜ばせる」ためには、ああいう姿勢になってしまうらしい。
食卓の下でパイズリとか、暗くて狭くて、絶対に大変だろうに。
雫は自ら進んで、私のことを「密かに」興奮させようとしていた。
「えっと、柾木、ちょっとだけ体、前に屈んでね」
「はあ……」
ここまで来るとどうすることもできないため、私は諦めて、その通りにする。
私が近づいてきたことで姿勢が安定したのか、雫はこちらへと近づいてきて、さっきよりもしつこくペニスを刺激した。
それに、今、ペニスを刺激するのは雫の柔らかなおっぱいだけじゃない。
「ちゅ……ここが気持ちいいんだよね?」
雫はすごくいやらしい舌使いで、私のペニスの先っちょを舐めている。
すでに何度もやってきたためか、私が興奮するツボを、完全に把握していた。
雫が体を動かすたびに、その濃い色の乳輪やツンと勃った乳首も、私を惑わすように左右に揺らめく。
こんなにえっちな雫が見られる人なんて、この世の中で、私一人だけなんだ。
いつも外では明るく振る舞う雫のことを思い浮かべると、私のペニスが、より一層太くなった気がした。
「れろ……ほら、橘さんより、わたしの方がいいでしょ?」
「……っ」
やっぱり、雫には敵わない。
私の弱いところを、誰よりも的確に見抜いている。
ずっと昔から、私は性的なところを完全に雫に掌握されているんだ。
「ちゅる……柾木のおちんちん、れろ……だんだん大きくなってるよ?」
「は、恥ずかしいって」
どうしようもない興奮をなんとか抑えながら、私は下に向けてそう呟く。
下手すると食卓に頭を打ちかねない、危険極まりない状況だというのに。
雫はいつものような態度で、私のペニスをただ丁寧に弄っていた。
「ふふっ、わたしのおっぱい越しで伝わってるよ。柾木の興奮が」
「は、恥ずかしい……って言ったんだろ」
「そう口にしながらも、嬉しいもんね」
当たり前だけど、もう食事ところじゃない。
まあ、雫なら「下の方の食事」だから大丈夫、なんて言ってきそうだから怖いけど――
「あ、高坂君か」
「……っ!」
その時、向こうから聞き慣れた声が聞こえてきた。どうやら、雫の兄弟のうち一人が、このキッチンまでやってきたらしい。
……まずい。
今の私、食卓の下ではペニスむき出しで、雫に奉仕されてる途中だというのに。
おかげでそのペニスもギンギンと見苦しく勃起してるから、バレたら恥ずかしいところじゃないし。
いや、私と雫って一応婚約って建前だから、バレても大事にはならない……かもしれないが、さすがにこれはすごく恥ずかしい。
横目で見てみると、幸いなことに、雫の頭は下がっていた。
とはいえ、きっと雫は兄弟がここにやってきたとしても、あんまり気にしてないと思うけど。
でも、雫は空気が察せる子なんだから、さすがにこのような場面では自重してくれるはず――
「すまない、食事の途中だったのか」
「は、はい」
さっきのパイズリのせいで多少前屈みになったまま、私はなんとかそう答えた。
……なぜか、ものすごくいけないことをやっているような気がする。
いや、それのほとんどは雫のせいなんだけど……。
「この方向で声が聞こえてきたから、ひょっとして雫も一緒なのかと思ったが」
「い、いえ……。雫は今、ここにはいません」
嘘だ。
……でも、こんなものがバレてしまったら、たとえ私が本当の男だったとしても、取り返しがつかない。
自分の下にいる雫は、あんまりそこら辺のこと、真面目に考えていなさそうだけど。
と、とにかく、向こうには私の下半身は見えていないはずだから、この調子でどうにか乗り越えないと――
「そうか。だが、君がここにいるということは、雫もすでに帰ってきたって話だな」
「は、はい……くっ!」
なんとか誤魔化そうと頑張っていた私は、いきなり下の方からやってきた快感に、一瞬、変な声を漏らしてしまう。
まったく、雫はあまりにもいたずらっ子だ。
どうして今のような場面で、こんな危なっかしい悪戯を仕掛けるんだろう。
いきなり勃起したペニスの先っちょを触ってくるものだから、思わず変な声を出してしまった。
「だ、大丈夫か、高坂君」
「は、はい。大したことではありませんから、あまり気になさらず……」
思わず、冷や汗をかいてしまう。
他でもない雫の兄弟の前で、快感の混ざった声を出してしまった。
そもそも、これは自分のせいじゃないけど、やっぱり恥ずかしいのは仕方ない。
「君と出会ったのも久々だし、後でゆっくりと話そう。今はゆっくりとくつろいでくれ」
「はい、あ、ありがとう……ございます」
上手く頭を上げられられないまま、私はどうにかそう返事する。
……顔が赤くなって、どうしても視線を合わせられそうになかった。
「ふふっ、兄さん、行っちゃったようだね」
雫の兄弟が離れていくと、食卓の下で、見慣れた顔がちょこんと頭を出してきた。
「雫、さっきのはさすがに――」
「ごめんね、柾木の慌てる顔、好きなんだ」
……こういうのを、世の中は小悪魔って呼ぶのだろう。
確かにさっきはやり過ぎ……と思いながら、やっぱり私は、この笑顔には勝てなかった。
「その詫びに、わたしが気持ちよくしてあげる」
そう口にしてから、雫は刺激を更に強めてきた。柔らかくて大きなおっぱいに、私のペニスは抵抗もできないまま、再び包まれてしまう。
自分のペニスが、さっきよりも激しく脈打ちしていた。
それに、雫の「手慣れた」舌使いまで併せると、もう耐えろと言われても無理だとしか言えない。
この気持ちを、いったいどう説明したらいいんだろう。
自分の奥に収まっていたクリが、男のような大きな一物になって、それが雫のおっぱいによって包まれてる快感、と言ったら正しいのだろうか。
こんな倒錯した快感、誰かに説明することなど、決してないんだろうけど。
ともかくこの、食事中のパイズリという異様な状況、そしてずっと与えられた刺激によって、私のペニスは、まさしく爆発寸前だった。
「柾木、我慢しなくてもいいよ? 顔、すごく苦しそう」
雫に指摘されて、私はますます自分の一物が大きくなっていくことを感じる。
きっと、今の私は顔ところか、ペニスまで見苦しく思えるのだろう。
……っていうか、あそこ――自分の大きくなったペニスが丸見えなのが、やけに恥ずかしい。
女の子なら、自分から見ようとしない限り、自分のあそこなんかまったく確認できないというのに。
今の自分は、どれほど興奮しているのかが言葉通り丸見えで、なぜかすごく顔が赤くなった。
それなのに、柔らかな雫のおっぱいはよりいやらしく形を変えて、私をなんとかして射精させようとする。
きっと、雫は強くそれを願っているのだろう。
自分の手で私をイカせたことを、誰よりも誇りに思っている女の子だから。
――ダメだ。そろそろ、出てしまいそう。
「はぁ、し、雫、そろそろ――」
「うん。わたしは大丈夫だから、いっぱい出してね?」
そんな甘い声を聞いていると、もう我慢なんか出来そうになくて。
だから、私は――
ずぴゅっ、ずぴゅっ……!
私のペニスから、遠慮なんかせずに、たくさんの精液が雫に向かってぶっ飛ぶ。
それをそのまま受け止めた雫のかわいい顔が、私の出した精液で見事に汚れている。
なぜか、心の奥から強い罪悪感が湧いてきた。
だって、その柔らかい頬も、その艶のある長い髪の毛も、私の精液が白く汚してしまったんだ。
「ふふっ……健康な男の子だから、いっぱい出しちゃったね」
自分の顔に私の精液が見事にかかってるというのに、雫は笑顔でこちらを見上げている。
自分の手で私をイカせたのが、誇りでもあるかのような顔で。
「……大丈夫、か」
「うん、すぐ洗えば問題ないし、へーきへーき」
「でも、髪の毛にも飛んじゃったんだろ」
「だから、今すぐシャワーでも浴びればいいって。ここ、わたしんちだし」
きっと臭ってるんだろうに、雫はむしろ嬉しいって顔だった。
私は、こっちの欲望をあそこまで浴びたのに、ああいう顔をする雫の目を見る勇気がなくて、そっと視線を逸らす。
「ふふっ、これてちゃんとわかったよね? 柾木の彼女は、ここにいるわたしだよ?」
まるで確認を取るように、雫はこっちに向けてそうささやく。
間違いなく、すごく気持ちよかった。
……まだ食事の途中だということを忘れるくらいには、思いっきり雫に興奮していた。
あの濃すぎる時間からようやく開放された私が、雫の部屋でうたた寝して目を覚ましてみたら、もう周りはすっかり暗くなっていた。
そのまま晩ごはんを食べて、しばらく経ってから。綾観家の二階にある小さなテラスで。
私は「ある人」と、いっしょに立ち並んで外を眺めていた。
「君とこうして話すのは、ずいぶん久しぶりだな」
「……そうですね、賢一さん」
今、私のとなりにいる人は、雫の一番歳上のお兄さんである、綾観賢一(あやみ・けんいち)さんだ。
雫とはかなり歳が離れていて、今はちょうど30歳。だが、雫によると「固く見えて、実はものすごく甘えさせてくれる」素敵なお兄さんらしい。私にはあまり、確認する機会がなさそうだけど。
雫は兄3人、姉2人を持つ末っ子で、当たり前ではあるが、子供の頃からみんなに愛されて育ったらしい。私もここに来るたびに、いつもそれを肌でひしひしと感じていた。
だからこそ、「あの事件」は綾観家にとって、とても衝撃的だと言えたわけだが……。今は雫も立ち直ったため、家の雰囲気もだいぶよくなっているそうだ。
だから、私も綾観家にはいつもよくしてもらったり、こうして「別の姿」で話すことがあったりする。そこまでよくある出来事ではないが。
……ちなみに、さっき雫がパイズリをしてくれた時に出くわしてしまったのも、この賢一さんである。
こうして「何でもない」顔で話はしているものの、あの時を思い出すと、頭から煙が出るほど恥ずかしい。
ともかく、こうして賢一さんと久しぶりにテラスで立ち並んだまま。
いったいどんなことを話せばいいのだろうか、私はそう悩んでしまった。
今の私は、賢一さんの呼びかけでこっちにいるわけだけど……。やっぱり久しぶりに出会ったから、何か話したいという考えなのかな。
一応、経験は重ねたつもりだが、やっぱり「男同士」として一対一で話すことは、まだ慣れていない。
「君には、あの日からいつも、迷惑ばかりかけてるな」
少し間をおいてから、賢一さんはこっちに視線をおかずに、そんなことを言ってきた。
「すまない。君にはとても重い荷物だとは思うが……それでも、雫が君のおかげでなんとか立ち上がってくれて、僕らは十分嬉しかった」
「いいえ、結構です。僕だって、その、好きでやっていることですし」
それは、紛れもない本当のことだった。
私にとって、雫はきっと、「ただの友だち」ではない。それ以上の何かだ。
とはいえ、いわゆる「恋人」的なものとは違って……自分もどう説明すればいいのか、まったくわからない。
でも、雫は私にとって、とても大切な存在だ。これだけは間違いない。
……とはいえ、雫から見ると、「恋人の対象として見てもらってない」だけで、モヤモヤされる可能性が高いけど。
「君にはまだまだ、迷惑をかけることになるんだろうな。君は元々女の子だと聞いているのに、こんなことばかりさせて、申し訳ない」
「それも大丈夫です。雫は僕にとっても、大切な存在なんですから」
「ならば、こっちも安心だが……」
そんなことを口にしながら、賢一さんは苦笑いを浮かべた。まあ、その気持ちはわかる。たぶん、雫のことを誰よりも大切に思っているのは、雫の家族だろうから。
「ともかく、高坂君」
私がそんなことを考えていると、急に賢一さんが、こっちを向く。
「これからも、雫のことをよろしく頼む」
そこまで言って、賢一さんは突然、こっちに頭を下げてきた。
――こ、ここまでするんだ。
なんとか平然なフリをしているものの、私は心の中で、ものすごく戸惑っていた。
賢一さんにとって、妹である雫はそこまで大切な存在なんだ。歳も離れているはずの私に、こうして頭を下げるほど。
以前からずっと、それはわかっていたつもりだけど……。急に、肩が重くなる。
私はこれからも、ちゃんと雫の「彼氏」にいられるのだろうか。
今の自分には、その、秀樹がいるというのに。
どちらも私の大切な人なんだけど、「恋人」になれるのはたった一人だけなんだ。
「はい、お任せください」
だが、私はそう言って賢一さんに頭を下げた。
今の私には、ただ、こうするしかないと思ったから。