「う、うわあっ?!」
こちらが抵抗する前に、茜は俺の顔をすばやく自分の胸に埋めてきた。呼吸できないのも辛いが、それ以上に、この胸の感触のほうがもっと大変である。
たぶん、今の状況を後ろにいる蒼乃がじっと見つめている気がするが、それを想像する勇気はあまりない。
蒼乃は今、いったいどんな気持ちで俺の方を見つめているのだろう。
俺が茜の胸に埋まっているのが複雑なんだろうか、それとも「自分」が情けない姿になっているのが辛いのだろうか…。
それから、蒼乃といっしょに電車で下校していた時に。
(メッセージアプリにて)
「さっきのあれ、気持ち、……よかった?」
「あ、それがだな、蒼乃……」
「あっ、大丈夫だよ。仕方がなかったと思うし」
「いや、だから……」
その時になって、俺ははじめて気がついた。
今日の俺は、蒼乃としても、そして「兄」としても、ものすごく情けない姿を晒してしまったのではないだろうか、と。